予防接種について
予防接種とは、特定の感染症に対して免疫をつけ、発症や重症化を防ぐことを目的とした医療行為です。
ワクチンは、細菌やウイルスなどの病原体の性質を利用して作られており、体内で免疫反応を引き起こすことで、その感染症に対する抵抗力を高めます。これにより、感染しにくくなるだけでなく、万が一感染した場合でも重症化を防ぐ効果が期待されます。
また予防接種は、ご自身を守るだけでなく、乳幼児や基礎疾患のある方など、ワクチンを受けることができない方を感染から守る「集団免疫」の観点からも重要です。
当院では、以下のワクチン接種を行っています。
- 肺炎球菌ワクチン
- 麻しん(はしか)・風しんワクチン
- 帯状疱疹ワクチン
- HPVワクチン
- RSVワクチン
- 新型コロナワクチン
- インフルエンザワクチン
そのほかの各種ワクチンについても対応可能ですので、ご希望の際はご相談ください。
肺炎球菌ワクチンについて
肺炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が肺に感染して炎症を起こす病気で、発熱、咳、痰、息切れなどの症状がみられます。高齢者や基礎疾患(心臓病・呼吸器疾患・糖尿病など)のある方では重症化しやすく、日本においても主要な死因の一つであり、特に65歳以上の方で多くみられます。
肺炎の原因はさまざまですが、成人の肺炎では肺炎球菌によるものが比較的多いとされており、ワクチンによる予防が重要です。肺炎球菌ワクチンは、重症化予防に有効です。
川崎市の定期接種
これまで高齢者の定期接種として使用されてきたニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)は、2026年3月をもって終了となっています。現在は、プレベナー20(20価肺炎球菌結合型ワクチン)が使用されています。
対象者
- 65歳の方(65歳の誕生日前日~66歳の誕生日前日まで)
※公費接種の機会は1回のみです - 接種日に満60歳~65歳未満の方で
・心臓、腎臓、呼吸器の機能障害(障害1級程度)のある方
・ヒト免疫不全ウイルスによる免疫機能障害(障害1級程度)のある方
- 制度や助成内容は変更される場合がありますので、詳細は川崎市公式ホームページをご確認ください。
自費接種可能な肺炎球菌ワクチン
公費対象外の方も、自費で接種が可能です。
- プレベナー20(20価肺炎球菌結合型ワクチン)
- キャップバックス(21価肺炎球菌結合型ワクチン)
キャップバックスは、プレベナー20ではカバーされていない血清型を含む新しいワクチンであり、より広い範囲の肺炎球菌に対応しています。
どのワクチンが適しているかはご相談ください。
接種間隔
ニューモバックスNPは、効果が時間とともに低下するため、再接種が検討されることがあります。
過去にニューモバックスNPを接種された方が、プレベナー20またはキャップバックスを接種する場合は、前回接種から1年以上の間隔をあけることが一般的です。
プレベナー20およびキャップバックスは、原則として1回接種で完了し、通常は追加接種の必要はありません。
風しん(風疹)について
風しんは、ウイルス感染により発熱や発疹などを引き起こす病気です。成人が感染すると症状が強く出ることがあります。
特に、妊娠初期の妊婦さんが感染すると、生まれてくる赤ちゃんに先天性風しん症候群(CRS)が起こることがあり、眼・耳・心臓の異常や発達の遅れなどを伴う場合があります。そのため、周囲の方も含めた予防が重要です。
風しん対策の背景
過去に公的な予防接種の機会が十分でなかった世代では、風しんに対する免疫を持たない方が一定数存在しています。特に成人男性では、自身が感染源となり、家族や周囲へ感染を広げてしまう可能性があります。
川崎市の抗体検査(無料)
川崎市では、風しん対策事業として以下の方を対象に、抗体検査(血液検査)を無料で実施しています。
- 妊娠を希望する女性
- 妊娠を希望する女性の同居者
- 妊婦の同居者
クーポン券による抗体検査(対象:男性)
昭和37年4月2日~昭和54年4月1日生まれの男性には、抗体検査を無料で受けられるクーポンが発行されていた制度があります。
2026年3月をもってクーポンの申込は終了していますが、2026年3月末までに抗体検査を受け、抗体が十分でないと判定された方の予防接種は、2027年3月まで延長されています。
ワクチン接種
抗体検査の結果、十分な抗体が確認できなかった場合は、MRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)の接種が勧められます。対象となる方には、接種費用の助成制度があります。
ご案内
風しんは、本人だけでなく周囲の方、特に妊婦さんや赤ちゃんを守るために重要な感染症です。ご自身の抗体の有無や罹患歴が不明な方はご相談ください。
制度内容は変更される場合がありますので、最新情報は川崎市公式ホームページをご確認いただくか、当院までお問い合わせください。
麻しん(はしか)について
麻しんは、麻しんウイルスによって引き起こされる感染症で、非常に感染力が強いことが特徴です。
主な症状は、発熱、咳、鼻水、結膜充血(目の充血)などの風邪様症状に続いて、高熱と全身の発疹が出現します。
感染力が極めて強く、空気感染を起こすため、同じ空間にいるだけで感染することがあります。免疫を持たない方が感染すると、ほぼ100%発症するといわれています。
重症化と合併症
麻しんは多くの場合自然に回復しますが、以下のような合併症を起こすことがあります。
- 肺炎
- 中耳炎
- 脳炎
特に乳幼児や高齢者、免疫力が低下している方では重症化することがあります。また、ごくまれに感染から数年後に発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる重篤な合併症も知られています。
予防(ワクチン)
麻しんはワクチンで予防が可能な感染症です。現在は、MRワクチン(麻しん・風しん混合ワクチン)として接種が行われています。
定期接種
- 第1期:1歳児
- 第2期:小学校入学前の1年間(年長児)
2回接種により高い予防効果が得られます。
成人の場合
以下の方は、抗体が不十分である可能性があります。
- ワクチン接種歴が不明な方
- 1回しか接種していない方
- 自然感染歴がはっきりしない方
これらの方は、抗体検査やワクチン接種(自費)を検討することが推奨されます。
医療機関受診の目安
麻しんが疑われる症状(高熱、発疹など)がある場合は、事前に医療機関へ連絡のうえ受診してください。院内感染防止のため、来院方法をご案内することがあります。
ご案内
麻しんは感染力が非常に強く、集団感染を引き起こす可能性のある感染症です。一方で、ワクチンにより高い確率で予防が可能です。
ご自身やご家族の感染予防のため、ワクチン接種について当院までご相談ください。
帯状疱疹ワクチンについて
帯状疱疹は、水ぼうそう(水痘)にかかった際のウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)が神経節に潜伏し、加齢や疲労、ストレス、免疫力の低下などをきっかけに再活性化して発症する病気です。
50歳頃から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が発症するといわれています。
症状と後遺症
体の片側に帯状の発疹と強い痛みが出現します。抗ウイルス薬で治療可能ですが、約2割の方で帯状疱疹後神経痛(PHN)が残ることがあり、数か月~年単位で痛みが持続することがあります。
特に高齢の方では、生活の質(QOL)に大きく影響することがあり、発症予防の重要性が高い疾患です。
予防(ワクチン)
現在、以下の2種類があります。
弱毒生水痘ワクチン
- 1回接種
- 費用が比較的安価
- 予防効果は中等度
- 免疫が低下している方には接種できない場合があります
シングリックス(組換えサブユニット不活化ワクチン)
- 2回接種(通常2か月間隔)
- 高い予防効果(90%以上)と長期間の効果持続
- 免疫機能が低下している方にも接種可能
当院では、予防効果および持続性の観点から、シングリックスを選択される方が多くなっています。
川崎市の公費助成(定期接種)
川崎市では、2025年4月より帯状疱疹ワクチンの公費助成が開始されています。
対象者
- 年度内に65・70・75・80・85・90・95・100歳になる方
※経過措置(2029年度まで)終了後は、65歳のみ対象 - 60~64歳で免疫機能に重い障害のある方
- いずれか一方のワクチンを選択
- 自己負担あり
接種時期の注意
- 定期接種は対象年度内のみ有効です
- シングリックスは2回とも年度内に完了する必要があります
任意接種
公費対象外の方でも、50歳以上であれば自費接種が可能です。
ご案内
帯状疱疹は、「かかってから治す」よりも「発症を予防する」ことが重要な疾患です。特に帯状疱疹後神経痛は治療に難渋することが多く、予防の意義が大きいと考えられています。
ワクチン選択においては、
- 接種回数
- 費用
- 予防効果と持続性
を総合的に考慮する必要がありますが、より確実な予防を重視される方には、シングリックスが有力な選択肢となります。
HPVワクチン(子宮頸がん等ワクチン)について
HPVワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を予防するワクチンです。HPVは主に性的接触により感染し、多くの方が一生に一度は感染するといわれています。
HPV感染の一部は、子宮頸がんのほか、肛門がん・中咽頭がん・陰茎がんなどの原因となります。また、子宮頸部異形成や尖圭コンジローマの原因にもなります
HPVワクチンの効果
HPVワクチンは、がんの原因となるHPV感染を防ぐことで、将来的ながんの発症予防につながります。
特に子宮頸がんについては、原因の多くを占めるHPV型に対して高い予防効果が報告されています。接種は、若い年齢で行うほど予防効果が高いとされています。
安全性について
HPVワクチンは国内外で広く使用されており、安全性に関するデータが蓄積されています。
主な副反応として、
- 接種部位の痛み・腫れ
- 発熱
などがみられることがありますが、多くは数日以内に軽快します。
まれにアレルギー反応などが起こることがあります。
使用ワクチン
現在、主に以下のワクチンが使用されています。
- シルガード9(9価ワクチン)
→ 現在の標準的なワクチンで、より多くのHPV型に対応しています - ガーダシル(4価ワクチン)
→ 一部で使用されています
川崎市の公費接種(定期接種)
川崎市では、対象の方に対して公費(無料)で接種が行われています。
対象
- 小学6年生~高校1年生相当の女子
接種回数
- 年齢により2回または3回接種
男性の接種
HPVワクチンは男性にも有効であり、中咽頭がんや尖圭コンジローマの予防に寄与します。
現在、男性の接種は原則として任意接種(自費)となります。
任意接種について
公費対象外の方でも、自費で接種が可能です。
ご案内
HPVワクチンは、将来的ながん予防につながる重要なワクチンです。特に若い世代での接種が効果的とされています。
子宮頸がんは、ワクチン接種と定期的な検診の両方が重要です。接種のタイミングや回数については、当院までご相談ください。
RSVワクチンについて
RSウイルス(RSV)は、乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層に感染する呼吸器ウイルスです。多くはかぜ症状で経過しますが、乳児や高齢者では重症化することがあるため注意が必要です。
RSV感染症の特徴
- 発熱、咳、鼻水などのかぜ症状
- 乳児では細気管支炎や肺炎を起こすことがある
- 高齢者や基礎疾患のある方では重症化リスクが高い
特に生後6か月未満の乳児では、入院が必要となることもあります。
妊婦の方への接種
近年、妊婦の方に接種するRSVワクチンが導入され、2026年度から公費接種が開始されています。
妊娠中にワクチンを接種することで、お母さんの体内で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、出生後の乳児をRSV感染から守る効果が期待されます。
接種時期
- 妊娠後期(28~36週)
高齢者の方への接種
RSVは高齢者においても重要な感染症であり、肺炎や入院の原因となることがあります。現在、60歳以上の方を対象としたRSVワクチンがあり、任意接種(自費)が可能です。
特に以下の方では接種が検討されます。
- 65歳以上の方
- 慢性呼吸器疾患(COPDなど)のある方
- 心疾患、糖尿病などの基礎疾患がある方
重症化予防の観点から、インフルエンザや新型コロナワクチンと並んで重要な選択肢となっています。
ワクチンの種類
現在、主に以下のワクチンがあります。
- 妊婦向けRSVワクチン(母子免疫)
- 高齢者向けRSVワクチン
いずれも不活化(組換え)ワクチンであり、ワクチンによって感染することはありません。
ご案内
RSV感染症は、乳児と高齢者の双方にとって重要な感染症です。
妊婦の方の接種により赤ちゃんを守ることができるようになり、また高齢者においても重症化予防が期待されています。
対象となる方は、接種の機会をぜひご検討ください。詳しくは当院までご相談ください。
新型コロナワクチンについて
新型コロナワクチンは、重症化や入院を予防することを目的としたワクチンです。特に高齢者や基礎疾患のある方では、接種により重症化リスクの低減が期待されます。
ワクチンの種類
現在、日本で主に使用されているのはmRNAワクチンです。ウイルスの一部(スパイクタンパク質)の設計図となるmRNAを体内に取り込み、免疫を作る仕組みです。
接種後、体内で一時的にタンパク質が作られ、それに対して免疫が形成されます。
- 体内に入ったmRNAは短期間で分解されます
- 人の遺伝子(DNA)に組み込まれることはありません
現在は、変異株に対応したワクチンが使用されています。
効果について
新型コロナワクチンは、感染そのものを完全に防ぐものではありませんが、
- 発症予防
- 重症化予防
に有効とされています。
特に高齢者や基礎疾患のある方では、接種によるメリットが大きいと考えられています。
川崎市の定期接種
現在、新型コロナワクチンは季節性ワクチンとして定期接種が行われています。
対象
- 65歳以上の方
- 60~64歳で重い基礎疾患のある方
- 対象者には公費助成があり、自己負担で接種可能です
- 実施時期は主に秋~冬シーズンとなります
任意接種
定期接種の対象外の方でも、任意接種(自費)として接種可能です。
ご案内
新型コロナ感染症は現在も流行を繰り返しており、特に高齢者では重症化のリスクがあります。ワクチン接種により、重症化を予防することが重要です。
接種の対象や時期は年度ごとに変更される場合がありますので、最新情報は川崎市公式ホームページをご確認いただくか、当院までお問い合わせください。
インフルエンザワクチンについて
インフルエンザの予防には、手洗い・換気・マスクなどの基本的な感染対策に加え、ワクチン接種が最も有効な予防手段の一つとされています。
ワクチンにより、発症のリスクを下げるだけでなく、発症した場合の重症化予防が期待されます。
流行時期と接種時期
日本では、インフルエンザは例年12月~翌3月頃に流行します。
ワクチンは、
- 接種後約2週間で効果が発現
- 効果の持続は約5か月程度
とされているため、10月~12月頃までの接種が推奨されます。
接種回数
年齢により接種回数が異なります。
- 生後6か月~12歳(13歳未満):2回接種
→ 2~4週間の間隔で接種 - 13歳以上:1回接種
- 特に高齢者や基礎疾患のある方は、毎年の接種が推奨されます。
川崎市の公費助成
川崎市では、高齢者を対象にインフルエンザワクチン接種の助成が行われています。
対象
- 65歳以上の方
- 60~64歳で重い基礎疾患のある方
- 自己負担あり(年度により金額が異なります)
- 実施期間は秋~冬(例年10月頃開始)
費用について
- 一般の方:任意接種(自費)
- 対象の方:公費助成あり(自己負担あり)
ご案内
インフルエンザは毎年流行を繰り返し、高齢者や基礎疾患のある方では重症化することがあります。ワクチン接種により、重症化予防が期待できます。
流行前の早めの接種をご検討ください。接種時期や回数については、当院までご相談ください。